介護職員初任者研修を受講した弟の話

私の弟は、介護士の資格をとりました。介護職員初任者研修を受けたのです。弟は、高校を卒業後、東京で歌の勉強をしていたのですが、なかなかうまくいかず、3年ほどが過ぎていました。もうそろそろ、見切りをつけるか、なんとかデビューできるかの時、あるオーディションに挑戦し、最終選考まで残りました。

しかし、最終選考のオーディションの1週間前から声が出なくなってしまったのです。レッスンのしすぎというよりは精神的なストレスによる、失語症のようでした。結局オーディションを受けられず、途方に暮れていた弟は、たまたま一緒のボイストレーニングのレッスンに通っていた友人が、歌をあきらめて、実家に帰る為に乗ろうとしていたバで出くわし、声をかけたことで、声を取り戻すことができました。その友人は、目が不自由で白いつえをついていました。弟のボイストレーニングのレッスンにも通っていて、その頃は、目は悪くてもまだ白いつえを突くほどではなかったのにその姿に思わず声が出てしまったようです。

彼女はお母さんの具合が悪く、自分が東京にいられなくなったと言っていました。「いい夢を見せてもらえた」、とほほえむ彼女に、自分がオーディションに落ちたことをいう
のは恥ずかしいと思いました。弟は自分も実家に帰るつもりだとかのじょに言って、彼女と別れました。弟は、何かをしなくてはならないと思い、夜の居酒屋さんでのバイトを始めました。

そして、自分でも長くできる仕事を探そうと思いました。今まで、歌ばかりをしてきて、学校の勉強もきちんとしたこともなく、高卒であるだけでは、なかなか仕事に就けないことは当たり前だと思いました。そこで、何か資格をとろうと思ったのです。そこで思い出したのが、白いつえの彼女のことでした。

「人の役に立つことがしたい」そう思って、考えたのが介護士の仕事でした。これなら自分が困っている人の役に立てるかもしれない。自分はそういう仕事をしたいと思うと頑張れると思ったようです。そして、居酒屋のバイトをしながら、介護職員初任者研修をうけ、今度は就職活動をする予定です。